若狭には胴回り樹高とも立派な木のある神社が多い。偶然だろうか、訪ねた神社の多くはそんな印象だ。遠くからも神社だと予想がつく消防署裏手の青々とした森。参道脇や本殿後方に太い幹のモチ、タブ、シイが並ぶ。見上げると密に重なる枝や葉の間から太陽が顔をのぞかせた。
若狭町
ダイジョウゴもニソの杜も木と祖先神をまつるという共通点を持っている。
金田久璋氏によれば、ニソの杜のなかにまつられる小祠のなかには「大上宮」「大聖権現」などの神札が納められており、それぞれダイジョウグウ、ダイジョゴンであり、「若狭に置ける大将軍信仰の一種」であるという。
その大将軍信仰は若狭一円、三方郡から敦賀にかけて濃密に分布しており、祭礼を霜月23日に行うことも共通しているそうだ。
ダイジョウゴの向かい側の上村家を訪ねてみた。
もしかしたら若狭町のホームページに書かれている以上の話が聞けるかもしれない。
しかし何度かチャイムを押してみてもひとが出てくる気配はない。
お留守のようだ。
あきらめて来た道を戻るが、三年前にそうであったように再び訪れることがあるかもしれない。
帰り道、上村家と同じく旧家を思わせる邸宅の家の隅に小さな祠が置かれ、タブの木と思われる大木が植えられていた。
※参考文献
金田久璋「ニソの杜・ダイジョコ・ジノッサン」「特別展『若狭の四季』」 福井県立若狭民俗資料館 1988年
金田久璋「ニソの杜、ダイジョゴ、地の神」「日本の神々 神社と聖地8 北陸」白水社 2000年
金田久璋氏によれば、ニソの杜のなかにまつられる小祠のなかには「大上宮」「大聖権現」などの神札が納められており、それぞれダイジョウグウ、ダイジョゴンであり、「若狭に置ける大将軍信仰の一種」であるという。
その大将軍信仰は若狭一円、三方郡から敦賀にかけて濃密に分布しており、祭礼を霜月23日に行うことも共通しているそうだ。
ダイジョウゴの向かい側の上村家を訪ねてみた。
もしかしたら若狭町のホームページに書かれている以上の話が聞けるかもしれない。
しかし何度かチャイムを押してみてもひとが出てくる気配はない。
お留守のようだ。
あきらめて来た道を戻るが、三年前にそうであったように再び訪れることがあるかもしれない。
帰り道、上村家と同じく旧家を思わせる邸宅の家の隅に小さな祠が置かれ、タブの木と思われる大木が植えられていた。
※参考文献
金田久璋「ニソの杜・ダイジョコ・ジノッサン」「特別展『若狭の四季』」 福井県立若狭民俗資料館 1988年
金田久璋「ニソの杜、ダイジョゴ、地の神」「日本の神々 神社と聖地8 北陸」白水社 2000年
「樹齢は数百年にもおよぶと思われますが、このタブの木の見所は地上1mくらいの所で10本に分かれ、それぞれ同じ位の太さで育っていることです」
若狭町のホームページで説明されている三宅の旧家、上村家のタブの木。
町の文化財にも指定されているだけあって確かにすごい。
小高い塚の上に植えられたどっしりした株からは枝が空に向かって伸びていて、遠くから眺めると緑のかたまりとして杜空間を形成している。
根元には上村家の祖先神をまつる祠が置かれている。
僕が三年前に訪れたときにも同じ道を通り、同じようにその祠を目にした。
まさか数年後、その木と祠に対面しようとは...
祠にまつられた祖先神はダイジョウゴと呼ばれている。
祖先神をまつるのは、大島のニソの杜に通じるところがあるが、こちらでは杜空間を形成とはいっても、一本のタブの木がその中心となっている。
むしろ滋賀で見た野神さんに近い、木を神としてまつる、ご神木のような印象だった。
写真は福井県若狭町。
※参考文献
若狭町ホームページ「タブの木 三宅・上村家 [町指定]」
上中駅を出て丹後街道を東へ歩を進め、街道の右手に田んぼが見えてきたら三宅の交差点を右に入る。
以前、おばさんにまわり地蔵さんのことを教えていただいたときのあぜをまっすぐ進むと鬱蒼とした杜が見えてくる。
信主神社境内にはタブノキと思われる巨樹が本殿を囲む。
何度も枝を伐採されたのだろう、幹にできたコブ。
根元部分にぽっかり空いたウロ。
木にしてみれば長い時間を生きてきた証のようなものだろうが、人間からすれば巨大なコブもウロも異形なものとして神秘的に感じられる。
「ここの坂をあがってもうて、左手にあるんやけど、また近くに行ったらだれかに聞いてもらえませんか」
軽トラのドアを開けて道を教えてくれたおじさんは僕を坂の手前まで案内して、坂の上を指差した。
指示通りに上がっていくが、道は曲がりくねって複雑だ。
「ここからもう見えてるんやけど。そら大きな木やから行けばすぐ分かりますよ」
庭で花を育てているおばさんに教えてもらってたどり着いた、三宅地区の旧家村上家のタブノキ。
「この木って確か...」
写真は福井県若狭町。
あぜに座って仕事をしていたおばさんによると、まわり地蔵さんは到着した翌日の朝食か昼食を食べてもらってから出発し、次の家に引き継ぐ。
「まわってくるとぼたもち作ってな。でもいまは食べる人がおらんさけ、お菓子を供えたりしてるんちゃうか...」
お地蔵さんは本来、女性しか担いではいけないのだが、最近ではそれが負担になり、車で運ぶこともあるようだ。
じつはその日、不思議なことがあった。
満員の小浜線車内で突然、僕の名前を呼ぶひとがいた。
だれだろうと思い後ろを振り返ると、座席に父親が座っていた。
小浜に鯛飯を買いにいくというのだが、なんという偶然だろう。
お地蔵さんの話のついでにおばさんに話す。
「すごい偶然やなあ、いい出会いがあるいうことと違うん？」
そう、いい出会いが...あった。
集落の方々を歩いてみたが、まわり地蔵さんには結局出会えなかった。
道路脇を流れる用水には澄んだ水が流れ、カニや小魚の姿も見られる。
集落には大木の根元に祠がまつられていた。
何の神さまなんだろう。
通りがかりに気になりはしたが、そのまま忘れていた。
三年後、僕はその木に再び出会うことになる。
写真は福井県若狭町。
JR敦賀駅1番ホーム。
駅近くに宿をとったのは早い時間に小浜線に乗りたかったからである。
手もとの時刻表によれば一日に十四本、しかも一時間に一本というわけではなく、名古屋からの出発では乗り換えの関係もあり敦賀出発は午前10時台になってしまう。
宿代は早い時間帯に小浜線に乗るための特別乗車券のようなものである。
福井県若狭町。
電車は若狭湾から離れると三方五湖の辺りから山側に南下していく。
上中駅を訪れるのは今回が初めてではなかった。
「まわり地蔵」の存在を初めて知ったのは四年前。
きっかけとなった新聞記事によれば、お地蔵さんは厨子のなかに納められていて、上中駅を中心に街道沿いに東の三集落と西の七集落をまわっているという。
「見てみたい」
簡単に見られるものではないし、そもそもどこをまわっているかなど突然、訪れて分かったものでもない。
三年前の8月30日、上中駅に降り立ち、あてもなく歩いていた。
「今、どこかをまわっているはずやさけ...」
あぜ道で作業をしていたおばさんに声をかけて話を聞くと、おばさんの家にはお地蔵さんは東まわりでやってくるという。
※参考文献
「『まわる 仏様も幸せも』ニッポン人・脈・記 仏像日和9」 朝日新聞 2010年1月15日付 夕刊
駅近くに宿をとったのは早い時間に小浜線に乗りたかったからである。
手もとの時刻表によれば一日に十四本、しかも一時間に一本というわけではなく、名古屋からの出発では乗り換えの関係もあり敦賀出発は午前10時台になってしまう。
宿代は早い時間帯に小浜線に乗るための特別乗車券のようなものである。
福井県若狭町。
電車は若狭湾から離れると三方五湖の辺りから山側に南下していく。
上中駅を訪れるのは今回が初めてではなかった。
「まわり地蔵」の存在を初めて知ったのは四年前。
きっかけとなった新聞記事によれば、お地蔵さんは厨子のなかに納められていて、上中駅を中心に街道沿いに東の三集落と西の七集落をまわっているという。
「見てみたい」
簡単に見られるものではないし、そもそもどこをまわっているかなど突然、訪れて分かったものでもない。
三年前の8月30日、上中駅に降り立ち、あてもなく歩いていた。
「今、どこかをまわっているはずやさけ...」
あぜ道で作業をしていたおばさんに声をかけて話を聞くと、おばさんの家にはお地蔵さんは東まわりでやってくるという。
※参考文献
「『まわる 仏様も幸せも』ニッポン人・脈・記 仏像日和9」 朝日新聞 2010年1月15日付 夕刊
「ダイジョウゴ」
日本語離れしたこの名前を僕が初めて目にしたのは、木とは関係のない「社宮司」「斎宮」「三狐神」「石神」など、シャグジと呼ばれる神さまを扱った本だった。
今井野菊調査の「御社宮司の踏査集成」によれば、シャグジやミシャグジ、そこから派生した名前の神は長野県を中心に、関西・中部・関東にかけて分布しているという。
分布一覧を見ると、長野「オシャグジ」、静岡「オシャモジ」、愛知「シャグジ」と同系統の名前が多いが、滋賀になるとなぜか「ダイジョコ」と呼ばれるものが多くなる。
長野静岡愛知ではそれらの読みを漢字では「社宮司」と表現するが、滋賀では大半が「大将軍」である。
「大将軍」といえば京都の地名にもあり、先ごろ訪れた大将軍八神社は大将軍神をまつる。
「陰陽道・道教の信仰による方位を司る星神」
現在では建築・移動・婚姻・旅行・交通となど霊験も多様化している。
大将軍とダイジョウゴとは、一体どんな関係なんだろう。
※参考文献
古部族研究会編「古代諏訪とミシャグチ祭政体の研究」永井出版企画 1975
大将軍八神社発行「大将軍八神社」しおり
日本語離れしたこの名前を僕が初めて目にしたのは、木とは関係のない「社宮司」「斎宮」「三狐神」「石神」など、シャグジと呼ばれる神さまを扱った本だった。
今井野菊調査の「御社宮司の踏査集成」によれば、シャグジやミシャグジ、そこから派生した名前の神は長野県を中心に、関西・中部・関東にかけて分布しているという。
分布一覧を見ると、長野「オシャグジ」、静岡「オシャモジ」、愛知「シャグジ」と同系統の名前が多いが、滋賀になるとなぜか「ダイジョコ」と呼ばれるものが多くなる。
長野静岡愛知ではそれらの読みを漢字では「社宮司」と表現するが、滋賀では大半が「大将軍」である。
「大将軍」といえば京都の地名にもあり、先ごろ訪れた大将軍八神社は大将軍神をまつる。
「陰陽道・道教の信仰による方位を司る星神」
現在では建築・移動・婚姻・旅行・交通となど霊験も多様化している。
大将軍とダイジョウゴとは、一体どんな関係なんだろう。
※参考文献
古部族研究会編「古代諏訪とミシャグチ祭政体の研究」永井出版企画 1975
大将軍八神社発行「大将軍八神社」しおり
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ブログについて
FATBIKEというタイヤの太い自転車に乗って延喜式内社を訪ねる旅に出ています。屋根神さまから式内社へ。自転車に乗って神社を訪ね、写真を撮りブログを書く、そんな楽しみに浸る毎日です！
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1973年7月生まれ。以前は名古屋や愛知県の屋根神さまを探しては写真に残していたが、2015年に岡谷公二著「神社の起源と古代朝鮮」に触発されて敦賀市の式内白城神社を訪れたことから式内社に関心を持つ。現在は介護の現場で働く傍ら、各地の式内社をFATBIKEに乗って訪ねる日々を送っている。
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◆当ブログの写真や図、文章等の無断転用・転載を禁止します。
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お知らせ
2016年8月現在、屋根神さまの残存確認は行っておらず、「市内屋根神所在地一覧」（2006年作成）に掲載されている屋根神さまのうちすでに消滅したお社もあると思われます。今のところ内容を更新する予定はありませんので、屋根神さまを訪ねる際は消滅したお社があることをご承知おきいただいた上で、「参考資料」としてご活用いただければと思います。
